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大人もワクワク 浜松の伝統工芸「浜松注染そめ」体験
浜松の伝統工芸「浜松注染そめ」で世界にひとつの手ぬぐいづくりを体験

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大正時代に浜松で広まった「浜松注染(ちゅうせん)そめ」は、手ぬぐいや浴衣の生地を染める日本独自の技術。「ぼかし」や「にじみ」の技術を生かす奥深い表現が幅広い世代に人気です!
約100年の歴史を持つ「二橋染工場」では、実際の染色工房で手ぬぐい染めが体験できると話題。今回、世界にひとつの手ぬぐいづくりに挑戦しました。大人も夢中になれる体験をレポートします♪

浴衣や手ぬぐいに最適な「浜松注染そめ」とは?

浜松は江戸時代から綿花の生産が盛んで、明治時代には綿織物も豊富に作られていました。そこへ、関東大震災で被災した東京の浴衣職人が移り住み、天竜川の豊かな水、強い風を利用した染色技術を広めたそう。それ以来、東京や大阪と並ぶ、注染そめの産地に成長しました。
表と裏の両方から染め上げる生地は、どこから見ても色鮮やかで肌触りがいいと好評です。今も「遠州のからっ風」と呼ばれる強風を利用し、自然乾燥させて風合い豊かに仕上げています。

「浜松注染そめ」の手ぬぐいづくりを体験!

 

昭和初期に創業した「二橋染工場」は、「浜松注染そめ」の伝統を継承しながら、新しいチャレンジを続ける工房のひとつ。
ここでは、工場オリジナルの型を使って、自分だけの手ぬぐい染め体験ができます。今回は、WEBメディア『日刊KELLY』編集部の瀬戸さんが体験! 芸大出身でテキスタイルデザインを学んだ経験もある彼女は「とても楽しみにしていました!」とのこと。
まずは生地に型をのせ、染めない部分に糊を塗る「糊置き」から挑戦します。
瀬戸さん「糊には粘土や餅米が入っていて、粘り気があります。思ったより難しい~」

糊で模様を囲み、好きな染料を注いでいきます!

 

次は、富士山、みかん、茶畑などの静岡名物が描かれた柄ごとに、色を変えて染められるように土手を作る工程です。防染糊を手作業で絞っていきましょう。
絞り終わったら、いよいよ染色がスタート! 「やかん」と呼ばれる専用容器に入った染料を、染めたい場所に注ぎます。

グラデーションを描きたい場所には、違う色の染料が入った2つの「やかん」を両手に持って同時に注ぐのがポイント。
染料を注いだら、染め台の下から空気をゆっくり抜き、じわじわと染料が染み渡るように調整します。この工程が、「浜松注染そめ」の繊細な「ぼかし」、「にじみ」の表現を生み出します。
瀬戸さん「注染そめは口伝だけで継承されたために、ほかの染色技術のように海外に広がらなかったと聞いてワクワクしました。今でも日本独自の技術なんですね!」

洗って乾かせば、オリジナル染めの手ぬぐいが完成!

 

染め終わったら、どんな風に仕上がっているか確認してみましょう。
瀬戸さん「カラフルできれい! しっかりグラデーションになっています」
この体験では、手ぬぐい13枚を一気に染めることができます。普段、職人さんたちは、4反(約50メートル)を一度に染めるのだとか!

 

ここからの仕上げ工程は、二橋染工場のスタッフさんがやってくれますよ。まずはたっぷりの水で洗って糊を落とします。脱水機にかけたら、今度は工場2階部分にある物干しスペースへ。
ほかの製品と一緒に、自然な風に吹かれて乾いていく姿に感動♪

瀬戸さん「2色、3色を同時に使い、自分らしいグラデーションが表現できて満足。色鮮やかな手ぬぐいに仕上がって嬉しいです」
二橋染工場のみなさん、ありがとうございました。

「二橋染工場」の二橋 代表に聞く、注染そめの歴史と未来

今回体験をさせていただいた、二橋染工場の代表・二橋教正さんに、「浜松注染そめ」についてお話を伺いました。二橋さんは、3代目として伝統技術を守っています。

――浜松注染そめ独自の魅力を教えてください。

まずは生地の表と裏を両方美しく染められること。文字を入れる場合は、どちらからも読めるように型を作ります。生地の裏表なく使えるため、浴衣を作るときに便利ですね。
また、浜松注染そめは染料を注いだあと、生地の下から空気を吸い出して染料を行き渡らせます。この時、空気弁を調整してゆっくりと浸透させることで、繊細な「ぼかし」や「にじみ」の表現が可能になり、とても美しいグラデーションが表現できます。

 

――「浜松注染そめ」の生地が、浴衣や手ぬぐいに最適だと言われる理由はなんでしょう?

染め上がった時の肌触りが、「原料である綿の感触」に近いと言われているからです。
浜松は天竜川の伏流水に恵まれ、水が豊かな土地です。たっぷりの水で、生地の繊維が柔らかくなるように洗うことで触り心地が良くなります。
さらに、遠州灘から吹く強い風で乾燥させる工程もポイント。現代でも自然乾燥させるスタイルを守り、優しい風合いを叶えています。

 

――今後はどんなチャレンジをしたいとお考えですか?

ひとつの工場で、ワンストップで製品化までを行いたいですね。例えば、うちに相談に来てもらえたら、型のデザインから染色、縫製工場と連携して浴衣に仕上げるところまでを手がけられるようにしたい。そのために、自社で型のデザインを始めたところです。
日本の伝統技術は分業体制が主流ですが、私たちが技術を集約させて一か所で仕上げまで行う体制を作り、伝統工芸を守っていきたいです。

――二橋さん、今日はありがとうございました!

二橋染工場

  • 電話 053-452-2686
  • 所在地 静岡県浜松市中央区常盤町138-14
  • 営業時間 8:00~17:00
  • 定休日 土・日曜、祝日
  • 駐車場 2台
  • アクセス JR浜松駅より徒歩約10分
  • URL https://www.nihashi-tinta.co.jp

「二橋染工場」の手ぬぐいづくり

STAFF

  • 取材・文 和田知子
  • 撮影 御手洗里美