北海道での大学院生活から全国縦断の旅を経て、浜松市へUターン。
人の「縁」に支えられ、世界への夢を胸に屋内農業に励む

• 「MzFarm－縁結農園－」初代園主 松本良介さん
• 【前居住地】北海道
• 【出身地】静岡県浜松市
• 【職業】自営業

清流と緑豊かな自然に恵まれた都田町で農業を営む松本さん。浜松市出身ですが、大学進学のため高校卒業後は北海道で6年間生活。5年前に浜松市へUターンし、近年注目が高まる屋内農業を手がける若手生産者として活躍中です。

浜松市へのUターンのきっかけ

浜松市内の高校卒業後、北海道の帯広畜産大学へ進学した松本さん。在学中はアフリカの農業研究に励み、卒業後は同大学院へ進学。実際にアフリカを訪れ、現地の農業に触れる機会もあったそう。転機となったのは就職活動。「大学院では1年生から就活が始まりますが、当時の僕にはすぐにやりたいと思える仕事や勤めたい企業がなかった。そこで大学院を1年間休学し日本縦断の旅に出ることにしました」と当時を振り返る松本さん。
全国各地の生産者などを訪ねる中で、ハーブを屋内栽培する農業を自分で始めたいという思いが強くなったそう。「栽培の候補地を考える中で、父親から『浜松なら出荷先となる飲食店の数も多く、大都市圏に近い。協力してくれる家族や知人もいる』とアドバイスされ浜松に戻ることにしました」。

現在のお仕事について

2019年秋に浜松へ戻り、翌年1月に都田町の古民家を借り「MzFarm－縁結農園－」を開業した松本さん。野菜やハーブを種から育て芽が出てから2週間ぐらいで収穫する小さなハーブ「マイクロハーブ」を母親と2人で屋内栽培し、県内外の飲食店に卸しています。さらに古民家を飲食ができるように改装。飲食店用の厨房機器も導入し、若手シェフを招きマイクロハーブや地元食材を使った料理をふるまう1日限定のレストランも定期的に開催しています。
「マイクロハーブや浜松の食材の魅力を多くの人に伝えたいという気持ちと、若い人たちに農家の新たな一面を見せたいという思いもあります。若手生産者の減少が問題になっていますが、農作業だけではなく、レストランでお客さまに食材の説明をしたり、接客したりする自分の姿を見て、農家の仕事もおもしろそう！と感じてもらえたらうれしいです」と笑顔で話す松本さん。活動内容はインスタグラムで紹介し、新しい農家の姿を積極的に発信しています。

浜松の魅力

「浜松は都会的な面と田舎の良さの両面がありますが、基本的なマインドは田舎。都会への憧れは強いけど、どこか都会になりきれない…（笑）。そんな浜松が好きですね」。都田町で農業を始めて５年目。自分を支えてくれた地域へ貢献をしたいという思いも強く、地元の事業者団体や消防団に入るなど積極的に関わるように心がけているそう。「よそ者が歓迎されず移住生活を断念したという話も聞きますが、浜松ではあまり聞かない。僕の仕事も応援してくれる浜松の人の温かな縁によって支えられています。市役所など行政機関も分からないことを質問したら丁寧に対応してくれました」。
休日は浜松のグルメ巡りを楽しみ、調理人との対話を通じて知見を広げているそう。「リフレッシュしたい時は引佐町にある岩峰『立須（たちす）』に行きます。滝沢展望台から奥に入った場所で、岩場を登って頂上に立つと360度のパノラマが広がります。浜名湖や遠州灘など浜松が一望できるので悩みも吹き飛びます！」

これからのこと

今後はMzFarmオリジナルの屋内栽培装置の技術を確立させ、浜松から全国そして海外まで栽培技術を広げていきたいという夢を抱く松本さん。その原点は、学生時代にアフリカで目の当たりにした食料事情にあるそう。「アフリカでは特に子どもや女性は空腹が日常で、餓死寸前という人も多かった。今の僕にできるのは食を供給すること。環境に左右されない屋内農業は、発展途上国でも農業で経済発展ができると考えています。そしていずれは宇宙でも農業できる技術を開発していきたいと思っています」と強い信念をもって農業に挑みます。

メッセージ

静岡県外に住んでいる同世代の友人からは『浜松に戻りたいけど、仕事があるか不安で戻れない』という声をよく聞きます。僕が経験して感じたのでは、浜松は良い意味で未完成の土地。東京のように何でもある訳でもないので、新しいことにチャレンジしようと思ったら実現できる土壌がある。人口も多く、さまざまな人が住んでいるので、新たなチャレンジを支えてくれる人も多い。努力次第で道を開ける街なので、自分の欲に素直になって浜松での生活をスタートさせてほしいですね。