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5月の風物詩「浜松まつり」
170以上の町が大凧を掲げて競い合う!
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毎年5月3・4・5日の3日間に開催される「浜松まつり」は、県内外から200万人以上が訪れる一大イベント。
子を祝う大凧が天高く、勇壮に舞い、各町が威信をかけて戦う糸切合戦が繰り広げられる「凧揚げ合戦」。各町が競い合う姿は大迫力、夜には御殿屋台を引き回す豪華絢爛な姿も披露されます。
凧揚げ合戦と御殿屋台、2つの顔を持つ「浜松まつり」。凧職人や歴史ある凧揚げ会のインタビューも交え、魅力を徹底紹介します!
「浜松まつり」とは? その歴史と現在のまつりの姿を解説
「浜松まつり」の特徴は、寺社仏閣や祭礼を起源としない「市民のまつり」であること。
江戸時代に凧揚げが市民に広まり、初めての子どもの誕生を祝う「初子の凧」の伝統が根付きました。明治時代には町内ごとに初凧をあげ、糸を切り合う「糸切り合戦」が本格化。浜松の各地で行われていた凧揚げを、一カ所にまとめることで合戦はさらに盛り上がりを見せます。
凧揚げ合戦終了後、夜からは御殿屋台やお囃子が登場し、凧揚げと御殿屋台の引き回しという2つの見どころが生まれました。第二次世界大戦後、現在の「浜松まつり」となって今に続いています。
「凧揚げ」の見どころを凧職人にインタビュー!
凧の魅力を教えていただくため、浜松市中央区天神町にある「伊藤さん家の凧工房」、伊藤安男さんからお話を伺いました!
江戸時代から続く商家であり、明治時代から「萬屋蒟蒻店」としてこんにゃく製造を行いながら、凧工房を営んできたお店です。
安男さんはこの道50年の9代目、現在10代目となるお子さんと一緒に凧づくりを行っています。
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100年以上の歴史を持つ伊藤さん家の凧づくりは、すべてが手作業。竹を割ってヒゴをつくる、ヒゴのバランスを見ながら組み上げる、和紙を貼る、凧印を描くなど、1工程ごとに丁寧に行います。麻を割いて撚りながら麻糸を作る技術も健在。
凧のサイズは4〜6帖が主流で、最大10帖まで。取材中に組み上げていたのは6帖サイズです。
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伊藤さん「初子を祝う凧を依頼いただいたら、真心を込めて一つひとつ製作します。凧はバランスが重要なので、丹念に太さをそろえて組み上げることが大切」
凧の表面には「凧印」と呼ばれる町内ごとの印と、初子を祝う家の家紋、子どもの名前を描き入れます。型紙制作から丁寧に手作業。少しでも間違えたら、竹ヒゴの組み上げからやり直すほど。
凧揚げ会場では、職人たちがつくりあげた凧をじっくりと見てみましょう。バランスよく舞う姿は、それだけ丹精込めて作られたことの証。
伊藤さん、ありがとうございました!
「中沢町凧揚会」にインタビュー! 凧揚げ合戦の醍醐味とは?
大正時代から凧揚げに参加し、現在150人ほどが所属する「中沢町凧揚会」。市内でも有数の規模を誇る凧揚会です。代表の渥美朋彦さんと副自治会長の富田昌和さんから、凧揚げ合戦の楽しみ方を教えていただきました。
渥美さん「中沢町の凧揚げは歴史が長く、昔ながらのスタイルを踏襲しています。凧揚会も厳しく統制が取れているので、結束力が強いですね」
富田さん「中沢町は、浜松まつりに向けて凧揚会の指示のもと、自治会、男子会、子ども、女性部、氏子会などが一丸となって協力します。子どもたちのラッパやお囃子の練習もかなり精力的です」
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勧誘はしないものの、20〜30代の若い世代も多く加入する「中沢町凧揚会」の魅力は、勝ちにこだわる姿勢。
5月3日は子どもの誕生を祝う初凧を揚げ、5月4・5日は凧揚げ合戦が行われます。
渥美さん「凧揚げ合戦は、凧を揚げた瞬間から戦いが始まります。それが昔ながらのルール。20〜30人がかりで4帖から6帖ほどの大きな凧をあげ、揚がっている他の町の凧に戦いを挑みます。糸をかけ、相手の糸を切ることが勝利の象徴」
期間中は10時から15時まで、常に凧は上がっているものの、戦いが起きるかどうかは風次第。強い風が合戦の始まりの合図です。多い時は10町以上が絡み合う混戦に!
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まつりに向け、年間を通して準備をするのも凧揚会の仕事です。
初子の凧は、各家庭が凧職人に依頼するケースが多いものの、「町内凧」と呼ばれる町が所有する凧は自分たちで製作。
浜松まつりが近づくと、発会式、安全祈願祭、凧の糸目付、前夜祭まで準備が続きます。そして、5月3日のまつり本番へ。
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渥美さん「凧揚げ会場では、初子の凧をあげて万歳をする際、子どもも大人と一緒にラッパを吹きます。私たちの町のラッパの音色は特にパワーがあり、元気一杯の音色をお褒めいただくことが多いですね。ぜひ中沢町の旗と凧、ラッパの音色を探してみてください。ただし、凧揚げ合戦の場は危険が伴います。会場外の通路からゆっくりご覧になってください」
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1959(昭和34)年に再建した中沢町の御殿屋台も豪華絢爛です。1本の木を掘り出して作った屋根には直接彫刻が施され、螺鈿(らでん)をそのまま埋め込んだ装飾まで贅を尽くした仕上がり。御殿屋台引き回しの際には、御殿屋台の通過とともにラッパの音が鳴り響き、提灯のあかりとお囃子の音色が加わります。
貴重なお話を伺えて、浜松まつりがいっそう楽しみに!
渥美さん、富田さん、ありがとうございました。
凧揚げ会場へのアクセス方法を予習
2025年は173町が参加予定の凧揚げ合戦。今年も威勢良く大凧が上がることが期待されます。
そんな凧揚げ会場は「中田島会場」という、中田島砂丘に隣接するグラウンドが舞台。
5月3~5日の3日間は現地の駐車場が使えないため、シャトルバスを利用しましょう。
①JR浜松駅隣接のアクト2階連絡通路でバスチケットを販売、専用発着所からバスに乗車して会場へ
②飯田公園(浜松市中央区大塚町1876-1)の臨時駐車場を使用し、シャトルバスで中田島会場へ。
詳細は以下のホームページで確認を。
https://hamamatsu-daisuki.net/matsuri/access/
御殿屋台引き回しも満喫しましょう
凧揚げを終えた人々が、夜はJR浜松駅周辺に集結。こちらは市内80町ほどが参加し、浜松市の中心部に美しい御殿屋台が登場します。
御殿屋台は釘を使わず、伝統技法を駆使した木組みで造られています。町ごとの財産として大切に保管され、まつりの日に美しい姿を披露。
御殿屋台を彩る繊細な彫刻はもちろん、屋台の上で奏でるお囃子も見どころ。お揃いの衣装を着た子どもたちが笛や太鼓を演奏し、優雅な音色を聴かせてくれます。さらに、「初子の祝い」の凧を揚げた家に町衆が集まり、祝いの練りを繰り広げるシーンも!
「浜松まつり」は、どのタイミングでも楽しめる要素がたっぷり。浜松の伝統や熱量をじかに味わえる、年に一度のおまつり。ぜひ体感してみてください。
浜松まつり組織委員会
- 事務局:浜松・浜名湖ツーリズムビューロー
- 所在地 静岡県浜松市中央区板屋町596 EAST ITAYA25 1階
- 電話 053-458-0011
- URL https://hamamatsu-daisuki.net/matsuri/
伊藤さん家の凧工房
- 所在地 静岡県浜松市中央区天神町5-12
- 電話 053-463-1572
- URL http://www.ito-san.jp
参考資料:「浜松まつりー学祭的分析と比較の視点から」
- 荒川章二、笹原恵、山道太郎、山道佳子/岩田書院(2006年)
STAFF
- 取材・文 和田知子
- 撮影 大関正行